第二章:侵入
ぴ……ぴ……ぴ……
目覚まし時計のアラーム音が、澪の意識を現実に引き戻す。
午前6時。いつもの時間。いつもの音。
しかし、澪の身体は昨夜の夢の重さを引きずっている。白い廊下の感触が、まだ足裏に残っている。
ぺた……ぺた……ぺた……
素足で冷たいフローリングを歩く音。澪は洗面所へ向かう。鏡に映る自分の顔を見つめる。
目の下のクマが、田中雅彦のそれと同じ色をしている。
しゃ……しゃ……しゃ……
シャワーの水音が浴室に響く。澪は温かい水流に身を委ねながら、昨夜の夢を反芻する。